「幽世神楽」
LYRICS
[Intro]
「変わりたい」と願った声が
いつしか私を追い越した
振り向けば 私の仮面を被った
見知らぬ何かが 嗤っていた
借り物の熱に 輪郭は溶け
ほんとうの鼓動は 祭囃子(まつりばやし)の底
ひとつ またひとつ
遠退いて行く
[Verse 1]
浮かんでは消える影
誰かが望んだ私だけ
美しい切り絵のように
切り取られて行く
中身の無い言葉 祝詞(のりと)のように並べ
借りてきた音へ 吹き込めば
ほら それらしく生きてしまう
影だけが先回り
理想の顔で 私を名乗る
[Pre-Chorus 1]
ひ ふ み よ
いつ む なな
音が鳴るたび
現(うつつ)と願いの境が裂ける
「代われ 代われ」と
声を重ねる
[Chorus]
廻れ 廻れ 幽世神楽(かくりよかぐら)
仇し野(あだしの)の露音(つゆね)
骨まで踊れ
虚像の願い 祝詞(のりと)に化けて
見えない何か 降ろしてしまう
「変わりたい」と願うたび
注連縄(しめなわ)が私の首を締める
知らない誰かが
本当の名前 塗り替えてゆく
篝火(かがりび)の眩しさ
嗤うこの身は もう
依代(よりしろ)
[Post-Chorus]
カ・ワ・レ
カ・ワ・レ
[Verse 2]
最初はほんの少し
背伸びするための 一夜の面(おもて)
されど 拍手の残響(ざんきょう)は
毒入りの蜜より甘く
足りないものも 痛む場所も
全て隠してくれた
綺麗に塗られた私のほうが
素顔の私より愛されて
胸に残った「変わりたい」は
閉じた内側を 爪で掻く
[Pre-Chorus 2: Alternating 7/8 and 4/4]
彼岸(ひがん)の私が
此岸(しがん)の名を騙(かた)る
ここにいる私が
塗り潰されていく
同じ歪(ひず)みで手を打つたび
心より先 影だけが舞う
誰が誰を
踊らせている?
[Bridge]
最初に欲しかったのは
神に選ばれる呪(まじな)いじゃない
なのに私は
愛されたおもてを
剥がす痛みに 怯えて
[Breakdown]
返せ 返せ 私の声を
剥がせ 剥がせ 嗤う面(おもて)
切れぬ注連縄(しめなわ)
欠け続ける拍
踊れ 踊れと
骨が鳴る
ひ ふ み よ
いつ む なな——
八つ目で息をするのは
ダレ?
[Final Chorus]
廻れ 廻れ 幽世神楽(かくりよかぐら)
仇し野(あだしの)の露音(つゆ) 血肉(ちにく)を巡る
中身のない祝詞(のりと)に 喉を与えて
私は私を 追い出してゆく
「変わりたい」気持ちとは裏腹に
堕ちてく甘さへ 溶けて逝く
一人歩きした私の影が
鳥居の向こうで 手招きをする
せめてその音を
私の名で
私の名で
鳴らして
[Outro]
迷い路(まよいじ)の響きが木霊(こだま)する
LINER NOTES
✍️ 作詞:南黒山ソイヤ より
山々に囲まれた小さな村では、年に一度、村人たちが歌や舞を披露する祭が開かれていた。 村に住む一人の男は、この古いしきたりを外の世界にも届け、もっと村のことを知ってもらいたいと願っていた。その思いに偽りはなかった。 男は外へ働きかけ、名声と人との繋がりを得ていく。しかし拍手を受け取るたび、「村を知ってほしい」という願いの主語は、本人も気づかぬまま「私を知ってほしい」へとすり替わっていった。 祭の日。男の目には、かつて愛した村の歌や舞が、ひどく狭く、拙いものに映った。 「この村の者たちと私とでは、見えているものも、目指す場所も違う」 男は誰にも告げず、村を去った。 村の因習も、外の世界で自分の名を売ることも、決して悪ではない。 村に残ることも、外へ出ることも、願いが変わることさえ罪ではない。 ただ、その願いはいつ、誰のものへと成り代わったのか。 村を去ったのは彼自身だったのか。 それとも、彼の仮面を被った“理想の彼”だったのか。 本人だけが、それに気づけなかった。