「キーン担当、私の隣で歌う」
LYRICS
耳鳴りと デュエットを始める
眠れない夜の 天井の下で
キーンという声が 勝手に伸びて
私の沈黙に ハモってきた
最初はただの 邪魔者だった
静けさを食べる 細いノイズ
やめてくださいと 布団をかぶる
返事の代わりに 音程が上がる
耳鳴りと デュエットを始める
誰も呼んでない 深夜のライブ
観客席には 古い不安が
パジャマ姿で 並んでいた
耳鳴りと デュエットを始める
主旋律なら 譲りたくない
でもあいつだけは 息継ぎもせず
私の弱音を 先に歌った
冷蔵庫の音が ベースになって
時計の針が リズムを刻む
遠くのバイクが 通り過ぎれば
街まで少し 伴奏になる
泣きたい理由を 探していたら
キーンが横から 伸びてきた
それは違うよと 言うみたいに
痛みの奥を 細く照らした
耳鳴りと デュエットを始める
うるさいくせに 離れない
孤独と呼ぶには 近すぎるから
名前をつけたら 少し笑えた
耳鳴りと デュエットを始める
下手な声でも 混ざってみる
私が小さく ララと歌えば
キーンのやつまで 少し丸くなる
誰にも届かない 歌でいい
拍手も評価も いらなかった
今夜を越える ための音なら
完璧じゃなくて ちょうどよかった
眠れないことを 責める代わりに
起きてる私を 許してみた
静かな夜には なれないけれど
静かじゃなくても 休めるらしい
耳鳴りと デュエットを始める
苦手な音を 敵にしないで
隣の席に 座らせたなら
胸のざわめきも 少し低くなる
耳鳴りと デュエットを始める
朝まで続くと 思っていた
けれど窓辺が 白くなるころ
キーンは遠くで 控えめになった
歌い終わった わけじゃないけど
夜の譜面は 閉じられていく
耳の奥には まだ音がある
それでも私は 起き上がれた
耳鳴りと デュエットを始めた
変な相棒を 連れたまま
今日の世界へ 出ていくために
小さく鼻歌を ひとつ足した