「卒業証書を食べて大人になる」
LYRICS
卒業証書を食べて 大人になる
筒のふたから 春がこぼれた
名前のところを 少しかじると
知らない責任の 味がした
校長先生の 長い言葉は
胃のあたりまで 届かなかった
拍手の中で 笑っていたけど
制服の影が まだ脱げない
卒業証書を食べて 大人になる
紙は思ったより 飲み込めない
おめでとうって 書かれた部分が
喉の途中で ひっかかった
卒業証書を食べて 大人になる
そんな儀式は どこにもないのに
食べなきゃ終われない 気がしていた
昨日の私を 残さぬように
友達の声が 廊下に残り
下駄箱だけが 口を開けてる
また会おうねと 言った瞬間
もう会わない日の 匂いがした
写真を撮れば 笑顔になって
泣けば青春に 見えるらしい
でも私には その全部が
包装紙みたいに 薄かった
卒業証書を食べて 大人になる
インクの味で 夢がにじむ
将来なんて まだ白紙なのに
終わりの判子は 押されていた
卒業証書を食べて 大人になる
立派な顔を 求められて
噛み切れなかった 校章の端を
ポケットの奥へ しまい込んだ
大人になるって 何だったのか
誰も答えを 配らなかった
ただ体育館の 出口の先に
いつもの空が 広がっていた
食べた証書は 戻らないけど
胸は急には 変わらなかった
子どものままで いられないだけ
大人になんか なれたわけじゃない
卒業証書を食べて 大人になる
苦くも甘くも なかった紙を
それでも少し 噛みしめながら
私は門まで 歩いていった
卒業証書を食べて 大人になる
お腹の中で 春が鳴る
さよならよりも 小さな音で
これから先が 始まっていた
帰り道では 筒だけ残り
片手の中で 軽く鳴った
大人の味は わからないまま
紙の匂いが 風に消えた