「僕、僕。」
LYRICS
LINER NOTES
🎵 作曲:Shikimi Takehana より
以下は、曲をつけた人間の一解釈です。歌詞は相手の性別を一度も書いていません。これは私が音を決めるために必要だった読みであって、正解ではありません。読んだ方の中に別の像があるなら、そちらが正しいと思います。 私はこの歌を、女性から、女性の友人への気持ちとして読みました。決め手は二つあります。 「その肩書きは窮屈だから」——この詞が強く響くように、「恋人」という語の持つ形が、二人の関係に収まらない理由を考えて、最も美しく、切実で、そして残酷な関係の形を考えました。 もう一つ引っかかったのは「たまたま隣にいたい」という一節です。隣にいることは、すでに許されているのだと思いました。手の届かない相手に「たまたま隣にいたい」とは言いません。近くにいる権利はあるのに、それを望む権利がない。こう解釈すれば、最初の設定と整合します。 年齢は、私が歌詞を読んで感じた第一印象よりも高く設定しました。成熟した大人の見た目の人がもし、この詞の言葉で思考していたら、とても切実に響くと思ったからです。「見て、ほら、僕を見て」。この落差を表現の核としたいと思いました。なので、二十代後半の二人にしています。 カバーもそこから決めました。深夜のカフェで並んで座り、片方だけがもう片方を見ている。相手はスマホを見ていて、その青い光は見ている側に届いていない。マグカップは片方だけ、満杯のまま冷めている。「渇いて」いるのに、飲んでいない。ネックレスは二人とも同じ形の細い金の鎖にして、見ている側のものだけを新品にしました。衛星は自分では光れない。重力で縛られて、常に惑星の周りを回っているだけ。 表情は最後まで迷いました。作り笑いの消し忘れを描くつもりが、上がってきたのはもっと醒めた顔。一瞬ではなく、何度も同じ顔でこの人を見てきた人の顔です。意図せず、より表現が生々しくなりました。この楽曲を貫くペダルの持続音は、この一方通行の視線の表現です。 そして最後に「僕」。二十代後半の女性が自嘲的に使うニュアンスを出したかった。私の解釈は作者の想定したものとは異なるかも知れません。ですが、こうした解釈も可能であることを示したかった。自己満足の解釈となっていないかどうか。もしそうなっていたとしても、せめて楽曲で報いることができていたら幸いです。