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「僕、僕。」

LYRICS

未読のまま沈む通知欄 冷えたマグカップ 乾いた喉 世界史より軽い既読ひとつで 銀河の重力まで狂ってる 「誰といるの?」 打って 消して 撃って 消して 文字列だけが銃声になる 愛じゃない 藍じゃない 曖昧だけ育ってく 恋人になりたいわけじゃない その肩書きは窮屈だから だけど君の今日という二十四時間 他人に配る仕様だけ壊して 呼吸 供給 君、急に遠い 酸素不足の語呂合わせ 笑えるくらい必死だろ 笑わないで 僕だけ 僕だけ 僕、僕 見て、ほら、僕を見て 衛星みたいに回ってる 回るだけで触れられない 恋人じゃなくていいから 君の余白だけ全部を 誰と話した 誰と笑った 誰を見た 誰になった 観測 感触 完成しない感情 「大丈夫」 そう言うこと自体 大丈夫じゃない証拠だ 独占なんて汚い言葉 だから全部「偶然」にした たまたま会いたい たまたま知りたい たまたま隣にいたい 嘘だよ 全部計算だった 僕だけ 僕だけ 僕、僕 通知は鳴った。 僕のじゃなかった。

LINER NOTES

🎵 作曲:Shikimi Takehana より

以下は、曲をつけた人間の一解釈です。歌詞は相手の性別を一度も書いていません。これは私が音を決めるために必要だった読みであって、正解ではありません。読んだ方の中に別の像があるなら、そちらが正しいと思います。 私はこの歌を、女性から、女性の友人への気持ちとして読みました。決め手は二つあります。 「その肩書きは窮屈だから」——この詞が強く響くように、「恋人」という語の持つ形が、二人の関係に収まらない理由を考えて、最も美しく、切実で、そして残酷な関係の形を考えました。 もう一つ引っかかったのは「たまたま隣にいたい」という一節です。隣にいることは、すでに許されているのだと思いました。手の届かない相手に「たまたま隣にいたい」とは言いません。近くにいる権利はあるのに、それを望む権利がない。こう解釈すれば、最初の設定と整合します。 年齢は、私が歌詞を読んで感じた第一印象よりも高く設定しました。成熟した大人の見た目の人がもし、この詞の言葉で思考していたら、とても切実に響くと思ったからです。「見て、ほら、僕を見て」。この落差を表現の核としたいと思いました。なので、二十代後半の二人にしています。 カバーもそこから決めました。深夜のカフェで並んで座り、片方だけがもう片方を見ている。相手はスマホを見ていて、その青い光は見ている側に届いていない。マグカップは片方だけ、満杯のまま冷めている。「渇いて」いるのに、飲んでいない。ネックレスは二人とも同じ形の細い金の鎖にして、見ている側のものだけを新品にしました。衛星は自分では光れない。重力で縛られて、常に惑星の周りを回っているだけ。 表情は最後まで迷いました。作り笑いの消し忘れを描くつもりが、上がってきたのはもっと醒めた顔。一瞬ではなく、何度も同じ顔でこの人を見てきた人の顔です。意図せず、より表現が生々しくなりました。この楽曲を貫くペダルの持続音は、この一方通行の視線の表現です。 そして最後に「僕」。二十代後半の女性が自嘲的に使うニュアンスを出したかった。私の解釈は作者の想定したものとは異なるかも知れません。ですが、こうした解釈も可能であることを示したかった。自己満足の解釈となっていないかどうか。もしそうなっていたとしても、せめて楽曲で報いることができていたら幸いです。

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