「メルトダウン」
LYRICS
午前四時の検温表に
存在しない体温を書く
朝焼けだけが赤すぎるまま
白い廊下を消毒している
冷たい指で数えた脈は
途中で別の数字に変わる
昨日の私を保管した箱で
小さな太陽が育っている
安全ですと笑う口元
背中に出口を縫いつけて
清潔な服を着た悲しみが
食卓の上で手を合わせる
正常 平常 日常 偽装
計測 訂正 閉鎖 炎上
正しい言葉を並べるほどに
私の意味だけ歪んでいく
まだ保てる まだ保てる
まだ保てる まだ保てる
そう言い聞かせる舌の裏で
小さな太陽が脈を打つ
警報装置は丁寧な声で
落ち着いて 落ち着いて
落ち着いて 落ち着いて
もう間に合わない
メルトダウン
心臓の地下で昼が煮える
メルトダウン
歯の奥で太陽が割れる
泣いていない 泣いていない
これは汗だと笑っている
燃えていない 燃えていない
まだすべて管理下です
私の中の避難放送
優しい声で繰り返す
逃げなくていい
逃げなくていい
逃げなくていい
どこにも行けない
あなたの望んだ温度に合わせ
発熱するたび氷を噛んだ
痛いと言えば困らせるから
平気な顔だけ上手くなった
記憶 移送 沈着 肥大
証言 誤認 祈願 崩壊
黙っていれば守れるものと
黙ったために失ったもの
どちらが多い どちらが重い
どちらが私だったのでしょう
秤の皿は融け落ちたのに
まだ正解だけ求められている
飲み込んだ 飲み込んだ
飲み込んだ 飲み込んだ
謝罪も 悲鳴も 生温い水も
あなたのくれた優しい嘘も
飲み込んだ 飲み込んだ
飲み込んだ 飲み込んだ
胃の底に沈んだ言葉が
互いを食べて熱を持つ
熱を持つ 熱を持つ
熱を持つ 熱を持つ
私の形を奪いながら
小さな太陽が大きくなる
メルトダウン
瞼の裏側で朝が融ける
メルトダウン
名前を呼ぶ声まで液体になる
助けてとは言っていない
気づいてとも言っていない
そばにいてとも言っていない
だからひとりで壊れていく
見ないでいて
見つけてほしい
触れないでいて
離れないで
矛盾のすべてが燃料になる
矛盾のすべてが燃料になる
冷たいものをください
水ではなく
忘却でもなく
昨日まで
私だったものを
返してください
あなたの目に映った私ではなく
あなたが理解した私ではなく
一度も誰にも
発見されなかった
私を返してください
メルトダウン
心臓の地下で昼が弾ける
メルトダウン
触れた世界が指から崩れる
泣いている 泣いている
これは汗ではありません
燃えている 燃えている
もう何ひとつ平気じゃない
止まらない 止まらない
止められない 止められない
ここまで育てた灼熱だけが
私を私だと証明している
メルトダウン
融けているのは街ではない
メルトダウン
壊れているのは炉ではない
許した顔で黙っていた
笑った顔で耐えていた
誰かの望んだ形をした
私の外側が崩れていく
それでもここにいる
それでもここにいる
それでもここにいる
それでもここにいる
午前四時の検温表に
初めて本当の体温を書く
紙が燃える
朝になる